ⓔコラム12-29-5 膵癌に対する検診 (スクリーニング)

 膵癌は予後がきわめて不良であり,根治切除が可能な状態での診断が重要であるが,スクリーニング法は確立しておらず,現時点では膵癌に対する検診は推奨されていない.米国予防医学専門委員会は膵癌に対するスクリーニング検査の有益性と有害性,診断精度,スクリーニングにより発見された膵癌や無症候性膵癌に対する治療の有効性と安全性に関する検討を行っている1).その結果,膵癌に対するスクリーニングやスクリーニングによって発見された膵癌に対する治療が,膵癌の罹患率や死亡率を改善するエビデンスはなかったことを報告し,膵癌に対するスクリーニングは,膵癌に関連する遺伝性疾患家系や家族性膵癌家系のような高リスク群には必要であるものの,症状のない成人に対しては推奨しないと結論づけている.早期発見が可能で,患者負担が少ない,有効かつ正確な膵癌に対するスクリーニング法の確立が切望されている.

〔奥坂拓志〕

■文献

  1. US Preventive Services Task Force, Owens DK, et al: Screening for pancreatic cancer: US Preventive Services Task Force reaffirmation recommendation statement. JAMA, 2019; 322: 438–444.